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高所作業ってなに?第3話 高所作業研究室の室長KEN #IRATAトレーニング

2020.07.30
高所作業研究室の室長のKENです!

さて、前回まではそもそも『高所作業』特性を持つものなのかを書いてきました。『高所作業』を取り巻く環境の構造上の問題も取り上げました。

では、第3話では『人』に注目して考えて行きます。

前回までに申し上げて来た通り、『高所作業』は“目的”ではなく“手段”であることは間違いありません。

とは言え、『作業』である事も承知の事実ですね。

例えば、塗装作業で最終的に求められる「仕上がり」や「品質」は、『高所作業』の場合は「安全」と読み替えられるでしょう。

では、『高所作業』で求められる安全とはなんでしょうか?

端的に表現すると「死なないこと」を求められているのだと思います。

しかし、建設業労働災害防止協会が出しているデータの通り、直近10年程度を見ても、高所からの墜落・転落で年間約140人程度が毎年亡くなられており、その割合は建設業での労働災害死亡事故の半数近くを占めています。

出典:建設業労働災害防止協会
次のデータはどうった作業時に墜落死亡事故が起きているかを示しています。

出典:建設業労働災害防止協会
ここで、『人』について考えて行きましょう。

上記のグラフを集計した方は、「組立作業中」+「解体作業中」で37.0%、「足場上作業中」+「足場上移動中」で56.3%と種類分けしています。

私はこのグラフを見た時にちょっと異なる種類分けをしました。

①「組立作業中」+「解体作業中」+「足場上作業中」が78.1%、②「足場上移動中」が14.9%と分けました。

①、②の違いは何でしょうか?

これは「仕事の構造」と「人間の能力」と深くリンクしていると考えています。

(1)人間は2つの事を同時に考える事は出来ない。

(2)優先順位が高い事柄に意識集中のバランスが偏る。

このマルチタスクの時代、多くの事を同時にこなしていると思える人がいますが、実のところ複数の事を同時に考えているのではなく、思考の切り替えスピードが速いだけなのだと思います。

では、人間には上記の様な”特性“があるという視点で①、②をみてみましょう。

①の3つは「本作業」と呼ばれる作業と「高所作業」をしている、②は「高所作業」のみしている場合での事故発生率ですね。

私も職人として仕事をして来たので、自身の経験をもとに振り返ると下記の通りです。

例えば、「外壁の点検」と依頼を受け、ロープアクセス技術を用いて作業を実施するといった場合、作業を行っている最中の私の頭の中は「点検業務」に80%、「ロープアクセス」に20%と言った意識集中のバランスで、思考を切り替えながら仕事をしていると思います。

これは、受講生の方に同様の質問をしても、感覚値はかなり近いと回答が帰ってきます。

この数字をみると20%の意識配分で高所作業してれば、それは事故って当たり前と思いませんか?

脳みそが2つあって、「点検作業」100%、「高所作業」100%の合計200%が出来れば事故はなくなるのかも知れないですが、ケルベロスには慣れないので、考えるだけ無駄でしょう。

では80-20%の意識バランスが変わらない中でどうしたら安全が担保できるか考えて見て下さい。

 

色々な答えが出てくるかもしれません。

私の考えは、「意識」している領域の外側である「無意識」の領域を使うこと…です。

では「無意識」の領域はどうやったら使える?

わかりやすい例としては、「お箸」。

みなさんは「お箸」を使う際に、「どうやって使おう」とか「どうやって持とう」とか考えていますか?

いつの頃から考えなくても「お箸」を使えるようになりましたか?

明確に記憶にある人は少ないと思いますが、これが「無意識」の領域を使えている良い例でしょう?

使い始めの頃は、母親から使い方を教えてもらい、怒られ、直しての繰り返しではなかったでしょうか?

これって一言で言うと「訓練」です。

「無意識」の領域を使うためには「訓練」しかないというのが私の考えです。

 

では、前話まで書いてきた内容と照らし合わせて考えて下さい。

『高所作業』を行う作業員みなさんは、高所作業を安全に行う為の適正な訓練を受けて来ましたでしょうか?

おそらく答えは”No!“ではないでしょうか?

 

私の結論:『作業』である以上、適正な訓練をしない限り安全は担保できない。

 

今回は事故発生ロケーションと「人」の一能力に注目して考えてきました。

次回第4話も『人の能力』についてですが、今回お話しした能力とは別の側面にスポットライトを当てて考えて行きたいと思います。
 
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