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『ロープ高所作業』施行は有効だった? IRATAインストラクター 高所作業研究室 KEN

2020.08.11
高所作業研究室室長のKENです。

今回は日本の国内法『ロープ高所作業』について書いていきたいと思います。

ここでは、法律の内容について書くのではなく、この法律がどういった意味を持っているのか、どの程度役に立っているのかについて考えて行きたいと思います。

過去のブログでも書いたのですが、『ロープ高所作業』の法律はつい最近出来たばかりです。

約50年ほど前からロープにぶら下がる作業をしていたにもかかわらず今までは法律がなかった...。

では何故このタイミングで法律が出来たのか?

一言で言うと『多くの方が死んでいる』からですね。

法律とは不思議なもので、危ないという事実が明白でも、人が死ぬ前には法律を作らないのですね。

ストーカー行為などでの警察の対応に似ていますね。ことが起きる前に相談に行っても何も動いてくれない。事件が起きてから動く。

ちょっと話しがずれました。戻します。

 

ロープ作業での事故は建設業全体の労働災害数からするととても少ない数字です。作業人口の母数が決定的に違います。

しかし、通常の労働災害とことなり、ロープ作業の事故発生はほぼ100%近い確率で死亡災害となってしますことです。仮に一時的に重傷で助かったとしても、その後亡くなられるか、大きな後遺症を残しすことになるでしょう。

基安安発0313第2号 ロープ高所作業に係る安全対策のさらなる推進について(要請)より
上記はH28年当時のロープ高所作業による死亡者数を示したものです。その後の年については『ロープ高所作業』のみの死亡者数をまとめた方向が出ておらず、正確な数字は分かりません。

しかし、私の知りうる限り、H29年、H30年、H31年もほぼ同水準の死亡者数であると思います。

さて、死亡者数が減らないことから法律の施行に至った『ロープ高所作業』ですが、H28年1月1日以降法律施行の成果はみられたでしょうか?

数字上だけとらえると成果はみられてません。

何故このような結果になっているかについては色々理由はあると思います。

そもそも法律は『最高』を定めるものではなく『最低』を定める物だと私は認識しています。

実際に法律施行後の事項事例として公表された内容を見る限り、『最低』を定めている法律すら守れない作業員が死亡に至っているのだと感じます。

はたして、これは亡くなった作業員の方達だけでしょうか?

別のブログで書いていますが、おそらく根本的にいつジョーカーを引いてもおかしくない作業員、事業者の方が大半を占めているのではないでしょうか?

そうだとすると、今後死亡者数は減るどころか、増える傾向になっていくと考えます。

何故かというと、『ロープ高所作業』の法律を中途半端な内容で施行してしまったため、認知だけされて作業者が増えてきているからです。

『ロープ高所作業』は既存の法律の一部改訂ではなく、新設された法律でしたので、せめて「最低」を定めるのではなく、欧米諸国の水準に近いレベルの内容で施行すべきだったのだと感じます。

私はお客様から『命がけの仕事だよね~』とよく言われます。

私は明確に『お仕事ですので、私達は命は掛けてません。』と答えます。一日数万円の賃金で毎日毎日命なんか掛けられませんよね。

命を掛けてやるべき仕事はないと思っています。普通の人がやるなら命を掛けなくてはならない作業を、命を掛けないで出来るような技術を持っているからプロフェッショナルなのだと思います。

一番勘違いしてはいけないのは、法律の水準があがったとしても結局法律はあなたの命を守ってはくれません。

もちろん法律を理解し、遵守することは重要です。しかし、何故死に至ってしまうのか?という本質的な事に興味を向けない限り事故発生の根本は改善に向かわないでしょう?

最後に質問です。

あなたが死んで悲しむ人はいますか?

 

次回は『墜落制止用器具』と『ロープ高所作業』の関係について書いていこうかと思います。