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『ロープ高所作業』と『墜落制止用器具』 IRATAインストラクターのブログ

2020.08.18
高所作業研究室のKENです。

今回は『ロープ高所作業』と『墜落制止用器具』の関連性等について書いていきます。

『墜落制止用器具』についてまだ詳しく書いてはいませんが、今回はこの二つの法律の関係性でよく受ける質問について整理して行きます。

 

良く出る質問はいくつかありますが、下記の通りです。

①『ロープ高所作業』をするのに「フルハーネス:墜落制止用器具」を着用しなくてはならないのですか?

②『ロープ高所作業』をするのに「墜落制止用器具特別教育」は必要ですか?

③海外メーカーのハーネスやランヤードは使っても大丈夫ですか?

こんなところで中心でしょうか...。

え~、とりあえず一言。自分の命が係っている仕事なんでちゃんと自分で調べて下さい!

質問者の多くは得てして、何も調べず聞いてきます。私からすると上記の問題は究極的にはどうでもいいことで、自分で調べてこれが最大限の安全が担保できると判断して作業を行うことが本質的には重要です。

別で書きましたが、法律はあなたの命を守ってはくれません。何をするにも高所作業の安全を担保するには最終的には自己責任で“決定”と“実行”を繰り返すしかないのです。

話しがそれました。戻しますね。

①『ロープ高所作業』をするのに「フルハーネス:墜落制止用器具」を着用しなくてはならないのですか?

原則、フルボディハーネスの着用が必要となります。法律文面の解釈だと6.75m以下については、“胴ベルトタイプの墜落制止用器具“でも良いとなっていますが、6.75m以下のみでロープ作業を行う事は現実的にはフルボディハーネスの着用と考えた方がいいでしょう。

ただし、その他の質問でも同様ですが、現在は『墜落制止用器具』施行後の経過措置期間中ですので、旧規格の『安全帯』を使用している方については上記の規定外と考え、従前の『安全帯』規格の法律に乗っ取った作業であればよいとされています。

 

②『ロープ高所作業』をするのに「墜落制止用器具特別教育」は必要ですか?

『墜落制止用器具』の法律では、3要件が揃う作業を作業員に実施させる場合、『特別教育』を必要としています。

3要件とは

1.高さ2m以上の箇所で

2.作業床を設ける事が困難な場合で

3.フルハーネス型を使用させる

です。

しかし、この規定の最後に括弧書きで(ロープ高所作業は除く)とあります。

ですので、仮に『ロープ高所作業』でフルハーネス型を使用する場合でも『特別教育』は必要ないと考えます。

では本当に必要ないでしょうか?

高所作業は大きく分けて3つの作業形態に分かれます。

1.レストレイント

2.フォールアレスト

3.ワークポジショニング(ロープアクセス含む)

この3つの形態の特徴や注意事項については別のブログで書きます。

今回、『墜落制止用器具』の法律で規制したのは『フォールアレスト』の作業になります。

ここで、ご自身の日々の作業をよく思い出して下さい。

作業の一例は下記の通り。

フェンスに囲われた屋上。

フェンスに囲われているのでその中にいれば基本的に墜落の心配はないですね。この場合特に安全対策は必要ありません。

ロープを吊り元に結びつけ、自分が降りたい場所にロープを下ろして行く。

この時あなたはどこにいますか?

この時点でフェンスの外に出ているのであれば、それはすでにフォールアレストの作業となります。屋上の縁から墜落出来ないように作業制限をしているのであればレストレインかもしれません。

次に垂らしたロープにバックアップディバイスと下降器具を取付け、屋上から外壁側に乗り込みます。

これも乗り込みが終わり、完全にロープにぶら下がるまではフォールアレストの作業となります。

 

このように、『ロープ高所作業』をする場合に『ロープ高所作業』のみ行う事は少なく、レストレイン↔フォールアレスト↔ワークポジショニングと作業は状況に応じて変化していきます。

この作業の変化を考えると、仮に『ロープ高所業』を行う場合であっても、『墜落制止用器具』の特別教育は必要なのでは?というのが私の考えです。

垂らしたロープを下から登り、そのまま降りてくるだけの作業であれば『ロープ高所作業』のみと考えられますが、多くの作業者がこれに該当しないと思います。

 

③海外メーカーのハーネスやランヤードは使っても大丈夫ですか?

以前よりこの質問はよく出ていました。

旧安全帯には『特殊な構造の安全帯』という項目がありました。しかし、この規定で『特殊な構造の安全帯』として使うためには“厚生労働省労働基準局長”が同等以上の性能、効力を有すると認めたものとされておりました。

これはいちユーザーが行うことではなく、本来はメーカー再度が動くべき内容でしたが、どの海外メーカーもこの作業には着手することはありませんでした。

今回の法改正ではどうでしょうか?

『墜落制止用器具』の法律文面にも、ほぼ同様の文面が第10条に書かれています。

第10条 特殊な構造の墜落制止用器具又は国際規格等に基づき製造された墜落制止用器具であって、厚生労働省労働基準局長が第三条から前条までの規定に適合するものと同等以上の性能又は効力を有すると認めたものについては、この告示の関係規定は、適用しない

この規定に基づく動きは各メーカーともしませんでした。

いくつかのメーカーが行った作業は、すでに海外の規格を通している商品が日本の規格に適合しているのか、強度規定や実験方法等の確認作業を行うことでした。

結果として、『墜落制止用器具』の規格規定に足りうる内容を確認できたとして、会社として適合宣言を出し、対象の商品についらく『墜落制止用器具』規格“適合”のラベル等を貼付し出荷するに至りました。

日本のハーネスは欧米の規格と異なり、第3者機関の検定等が必要ないため、会社で適合の判断を行うことで規格適合をうたうことが出来るルールとなっているためです。

今は

Petzl社、CAMP社、singing lock社等が国内法に適合しているとして、ハーネスやフォールアレストランヤードを『墜落制止用器具』として販売しています。

よって、この適合宣言をしている商品については規格適合品として国内メーカー製造の商品同様に使用可能と言うことになります。

 

私の結論

確かに法律上は何をしなくてはならないかが規定されています。しかし、現在の日本の高所作業を取り巻く法律は施行されたばかりか、尋常じゃなく古いか、のどちらかになります。

自分の命は自分でしっかり守りましょう!

余談

『墜落制止用器具』の法改正で、ようやく国際標準に法律水準を合わせる動きをしましたが、結局日本独自の風習やメーカー再度の都合(出荷本数など)が含みおかれたという法改正になってしまったのだと思います。

有識者会議の参加者がどういった経歴なのかまでははっきりわかりませんが、少なくとも欧米からの経験豊富な見識者が招かれた様子はないように思えます。

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